こだわりから解き放たれて
 第四章 マクロビオティックな生活
6、食生活ノート

 帯津三敬病院では、気功のほかに健康チェックとして食生活指導も行っています。指導の要点を紹介しますと、食生活で最も大切なのは主食をきちんと食べること、おかずが多いと豊かに感じますが、身体にとっては決して好いことではありません。主食は未精白の穀類で、玄米雑穀が理想的です。玄米8〜9割に、2〜3種類の雑穀、豆類、例えば粟、稗、丸麦、はと麦、大豆、小豆、黒豆などから好みのものを入れて炊きます。どうしても玄米食が難しい場合はせめて胚芽米、五分搗米などにします。その他の主食としては玄米、ライ麦、未精白穀類で作ったパン、うどん、スパゲッティ、日本蕎麦、玄米餅、粟餅などを勧めています。
  副食は
@ 魚介類 
鰯、鯵、わかさぎ、小女子、じゃこ、イカ、タコ、カニ、貝類などできるかぎり頭から尾まで食べられるもの、また質のよい有精卵など。
A 豆類
  いんげん、そら豆、小豆、大豆など、また豆腐、納豆などの大豆製品、種子類は胡麻、ぎんなん、くるみなど、グルテン製品としては麩、グルテンバーガー、グルテンミートなど。
B 野菜は季節のものを中心にし、生野菜にかたよらないように。海草はワカメ、ヒジキ、コンブ、そしていも類など。

この@ABの割合は1:1:3が好ましく、@の魚介類と卵は毎回そろえなくてもよいとのことです。

 間食は基本的には必要なく、食べる場合は少量にすること。例えば、いも類、種子類、ドライフルーツ、玄米煎餅など。また飲み物は薬草茶(ドクダミ、ハブ、ヨモギ、カキ、スギナ、ビワ、クコなど)緑茶、番茶、自家製ジュース、天然果汁、豆乳などをあげています。
  調味料は天然醸造の味噌、醤油、酢、みりん。精製度の低い砂糖・植物油・塩、混じり物のない蜂蜜など、これらを添加物のないものを利用すること。

 避けるべき食品としては、精白した穀類(白米、真っ白いパン、精白した麺類)、肉類、食肉加工品(ハム、ソーセージ類)、バター、てんぷら、フライ類、白砂糖及び白砂糖の入った食品(チョコレート、清涼飲料水、あめ、アイスクリーム、ケーキなど)、市販の牛乳、コーヒーの多飲などをあげています。また油は炒め物程度にすること。

 外食については、本当に身体を変える気があるのなら、外食はないものと考えるべきです。ただ、現代の社会の中では仕事や人の付き合いなどで外食を避けるのは難しい現状で、何らかの工夫が必要です。どうしても外食をせざるを得ない場合のために次のような指導をしています。
@ 自分で店を選べる場合
自然食品店を選ぶ、飲食店の中では日本そば屋さんが無難、できるかぎりあっさりとしたざるそば・とろろそば・おろしそば・かけそばを注文する。日本料理屋さんでは定食のようなものを選ぶ。
A 自分で店を選べない場合、出された料理の中から上手に選択する。細かいことを考えたらきりがないので、次の食品を避ける。肉類(牛・豚・鳥・ハム・ソーセージなど)、揚げ物(てんぷら・フライ類)、白砂糖が多く入った食品(ケーキ・まんじゅう類)、どのような料理を出されてもご飯を多く食べる。野菜・いも、海草、魚料理を食べる。
B 喫茶店でお茶を飲む場合
比較的よいものとして、トマトジュース、日本茶、紅茶など。コーヒーを出されても砂糖は入れない。
C 自動販売機で何かを飲む場合
せめて砂糖の入っていない水、日本茶、ウーロン茶、トマトジュースなど。
D 外食がどうしても多くなる方については、玄米胚芽や梅肉エキスなど健康補助食品を勧めています。

 しかし外食を続けていると健康維持や回復は望めません。病気治療中の人は特に食生活をしっかりと守ることが大切です。以上が指導の内容です。

 健康に気をつけることは、毎日食べている食事の内容に気をつけることでもあります。美食、飽食の時代、街にはどこにでもレストランがあります。スーパーにはすぐに食べられる料理が並んでいます。目先のグルメに飛びついたり、いい加減な食生活や貪り食いなど、好き放題なことができる環境で私たちは生活しています。お腹が満たされれば満足している現代人は、昨日何を食べたかさえ忘れるほど食事の内容には無頓着です。食生活ノートを書いてみるとすぐに分かります。一日のうちで食べた料理名と材料名を朝食、昼食、夕食。間食に分けてすべて記入します。これを一週間〜一ヶ月続けて、後でよく読み返します。するといかに身体によくない無謀な食べ方をしていたかなど、自分自身でさえ驚くような内容にびっくりさせられます。これで病気にならない方が不思議だと思うくらい自分の身体を虐めていることに気がつきます。
  私たちは病気になると慌てて病院に駆け込みますが、実はその原因は自分が作っていたのであるということをこのデータは明らかに解らせてくれます。

 帯津三敬病院では、この食生活ノートをもとに、希望者には相談日を設け、食生活改善をその人の身体の状態や生活環境の中で無理なく実行できるように指導してくれます。私たちも相談に行きチェックしていただきました。最初は添加物の入っていない調味料にすべて変えることから始めます。何度か指導を受けているうちに90点という好成績をいただくことができました。しかし満点とするにはいかに難しいか、人間の食べることに対する欲望は限りなく奥深いものだと痛感させられます。
指導に当たってくださった先生は、幕内秀夫栄養学講師で、著書「体によい食事ダメな食事」のなかでこう語っています。
「もしあなたが書店に行き、食生活に関する本を読みあさったならば、もっと絶望的になるはずです。なぜならば書店には『〇〇で病気が治る』といった本が山ほどあるからです。もしこれらの本に書いてあることがすべて本当なら病気になる人などいないということに気がつくでしょう。また何も食べられるものがないということにも気がつくはずです。食生活の情報が混乱している今日、本気で考えようとすればするほど訳がわからなくなってしまう現状です。しっかりとした考え方を理解することが大切です」と。
  「体にいい」となると、その食品が集中的にはやり、逆に「体に悪い」となると塩や一部の食品が悪者になってしまいます。情報氾濫がこういうフード・ファディズムの弊害を招く結果となっています。物事はすべて総合的に働いているのであって、それだけで健康になれる食品などはなく、身体に良い悪いは「何をいただくか」と「どういただくか」更に「どう生きるか」の生活習慣も大切であるということです。

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