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赤いアロハのアメリカ人  宗像 善樹

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2016-8-13 20:44 | 最終変更
m-hanami  モデレータ   投稿数: 373
赤いアロハのアメリカ人

宗像 善樹

今から約40年前、アメリカ人の彼と日米企業間の契約交渉を、東京にある渉外弁護士の事務所で行いました。非常なハードネゴシエーターでした。
連日、激しい交渉を繰り返し、3週間後にようやくシェイク・ハンドとなりました。
契約調印を済ませた日の夕刻、彼が滞在していた都内のホテルのバーで乾杯し、お互いの健闘を称えあいました。そのとき彼が、新渡戸稲造博士の「武士道」英語版「BUSHIDO,THE SOUL OF JAPAN」を鞄から取り出し、『武士道の本を何度も繰り返し読んだこと。日本人の精神を尊敬していること。今回、「武士道の国日本」を訪問でき、非常に感激していること。』を嬉しそうに話していました。
 翌日、彼はアメリカへ帰りました。 私は、そのとき限りの、一期一会の出会いだと思っていました。

ところが、それから10年後、偶然にも、ハワイ・オワフ島のホテルのロビーで、彼と再会しました。
彼も私も、家族サービスのハワイ旅行中の出来事でした。
彼が私を覚えていて、声をかけてくれたのです。
彼は、赤い花柄のアロハを着ていました。まさしく、ワイキキビーチの雰囲気でした。
一週間、プールの中で水をかけ合って楽しそうに遊ぶ日米の妻や子供たちを眺めながら、彼と私はプールサイドでのんびりビールを飲み、武士道の話に花を咲かせ、電話番号とアドレスを交換して別れました。

それからさらに30年、2011年8月に彼から私の自宅に電話がありました。
「東北地方の被災地を見舞うため来日している。是非会いたい」
都内の、例のホテルで待ち合わせました。
当日、約束の30分前にホテルに着いて、ロビーのソファに座っていると、エレベーターホールの方から赤い花柄のアロハを着た、杖を突いた大柄のアメリカ人が歩いてきました。
私は直ぐに『彼だ』と分かりました。
今度は、私の方から彼に近寄り、声をかけ、再会の固い握手を交わしました。
彼が笑いながら、そして、しんみりした口調になって言いました。
「私も年老いて、頭の髪も薄くなった。ヨシキに見つけてもらおうと、ハワイのときの赤いアロハを着てきたよ。今回は、東北の被災地を訪問して、日本人にお見舞いを述べにやってきた。だけど、私がとても驚いたことは、東北の人たちは皆、アメリカの常と違って、感情を抑え、気持ちを保って、冷静に行動していた。むしろ、若い娘さんが、私の老体を気遣って、やさしくハグをして私の体を支えてくれた。非常に感激した。日本女性の武士道に触れた思いがして胸が熱くなった。日本人の情緒は本当にすばらしい」
私は、彼に日本訪問のお礼を言うのと同時に、アメリカ人の物持ちの良さにしきりに感心しました。
はからずも、彼とこういう生涯の付き合いになったのは、最初の交渉の場での率直なぶつかり合いが、お互いの琴線にどこか触れたのだと思いました。
ハードネゴシエーターだった彼もすっかりマイルドなオールド・アメリカンになっていて、過ぎ去った若き日のことが夢のように脳裏を駆け巡りました。
                               了
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