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坂本龍馬
3、 お龍の入浴


第二章 龍馬受難

4、愛憎紙一重


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 4、愛憎紙一重

 お龍が龍馬と初めて会ったのは、土佐の脱藩浪士の会合だった。
 場所は京の金蔵寺の庫裏で、ここに匿われている勤皇の志士の集まりに、客が来て決起集会を開くという。そこに扇屋に出入りの客が何人かいて、どうしても扇屋のお龍を呼んで酌をさせようということになった、と聞いている。その寺は母の貞が寺のお尚と親しい仲だけに、行くことを渋ったが、宿には既に日当が払われていて、悋気な店主からどうしても行ってくれと懇願されては仕方ない。
 渋々、顔を出して料理の手伝いを考えたのだが、そこで客人の龍馬に会ったのだ。
 そこの和尚も仲間も、龍馬には深い信頼を寄せているらしく、龍馬が熱く語る開国論に耳を傾けて真剣に質疑応答を交わしていた。
 ただ、あの人の初対面の印象はあまりよくない。なにしろ、堂々としているのか茫洋としているのか判別がつかず、酌をしながら会話の糸口を探しても無駄だった。お龍のことなど全く無視しているのか会話もはずまず、二人の会話で共通するものは何もなかった。ところが、お龍の帰り際にさり気なく「近く寄るによって優しうしてや」と恥じらいのある笑顔で囁いた。その数日後に扇屋に現われて泊まって情を交わし、一夜にして二人は深みに落ちたのだ。
 それにしても、龍馬を知ってからのお龍はどんどん変わっていった。あれだけ気が強く周囲に反抗的だったお龍が龍馬の言うことなら何でも素直に聞けるようになったし、寺田屋に連れられて来たときも不安はなかった。とくに、寺田屋の女主人のお登勢会った途端、噂通りの侠気に溢れたふところの深い女傑であることをお龍は直観で知った。
「あんたの言うことなら何でも」と、龍馬の頼みを二つ返事で受けた寺田屋のお登勢は、自分の感情を押し殺して何も言わずに、お龍を住み込みの女中として受け入れてくれた。お龍は、お登勢の龍馬を見る眼に、深い愛情が宿っているのをすぐ見抜き、それでもなお自分を受け入れてくれた大きな慈愛に心から感謝した。
 お登勢は、「冬の次は春だから」と、寺田屋を再出発として新たな人生を歩もうとしているお龍を赤飯で祝ってく励まし、宿での名前も春の訪れを祝して「お春」と付けてくれた。それからは、ここでのお龍は、お春という明るい名で呼ばれている。
 お龍は湯船に浸かって目を閉じ、幸せな自分にこころよく酔っている。
 恥ずべき立場だった自分を、龍馬はためらいもなく抱いて心の傷を癒してくれた。過去のことは口が裂けても言えないが、この愛があれば何も恐れることはない。かつては秘めやかな男女の仲だった二人だが今は違う。堂々と愛しあうことが出来るのだ。龍馬が今までにどれほど多くの女を求めて来たかは知らないが、もう、自分以外には考えられないようにする。こう覚悟を決めた以上は、女の命を賭けても他の女には負けたくない。過去に早まって婚約までしたという佐那という女剣士、こんなのは問題外だ。この女は多分、龍馬の体は満たせても心までは満たせなかったはずだ。あれこれ考えるてゆくと、龍馬と接触のある全ての女が恋敵に見えてくる。どんな女でも、優しい言葉と同時に実際に行動し自分を好いてくれる男には弱いもの。だからこそ龍馬を絶対に手放せない。ということは惚れた男を奪おうとする敵には絶対に負けないことだ。それが仮にお登勢さんであっても、もう二度と龍馬に抱かせたくない。それが女の戦いに勝つことだ。それと、これほど好きになった男に裏切られたら・・・その時は迷わず殺すだけだ。
 この寺田屋には、歴史に残る大きな事件の跡があるのをお龍も知っている。
 四年前の春、この寺田屋で起こった薩摩藩の内紛による惨劇は、今もなお語り草になっていて記憶に新しい。宿のあちこちの柱や欄間に残る刀創や血の染み跡がその凄惨さを残していて、一時は気味悪がって誰もこの宿には近づかなかったから、一時は休業にする話もあったという。
 その後、妾狂いで家を出ていた伊助というご主人が病死したのを契機に、薩摩藩が以前にも増して贔屓にしてくれるようになり、景気を盛り返し、寺田屋は伏見に五十軒近くある船宿の中で一番の船宿と言われるまでに繁盛して名を上げた。寺田屋は旅籠の鑑札こそあったが本来は、大坂と伏見を船で往来する客の休憩所として食事は出すが泊めることはしなかった。それが、経営方針の変換から薩摩藩士と藩邸に出入りする武士や商人を相手に宿泊も認めるようになり、それからは収入も安定して余裕もできている。だが、この宿には怨念が宿っている。お龍は人一倍カンが鋭いから、うすら寒く夜が更けた丑三つ時に、今でも惨殺された薩摩武士の怨みの声が隙間風に乗って、喉笛のように細く長く聞こえて来ることがある。なぜか今夜も、冬の夜寒の隙間っ風が気味悪く吹き込み、ぬるくなり始めた湯で少々のぼせが消えてきた肌に寒い。もちろん錯覚なのは承知の上だが、生理的に感じるものは仕方がない。逢い引きを前にこんなことを考えるのは、今までの例で思うと、何か厭な予感がする。今も耳を澄ますと、ピューピューと口笛のような音が聞こえたよな気がする。気のせいかも知れないが空耳にしても不気味なことだ。いや、気のせいでもなさそうだ。
 ひょっとすると・・・?



5、 捕吏集結


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