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アルプス秘話
3、銀ぶら(3)

4、指輪−1

                  
    葵と恵子は、創始者がハゲていたから「ハゲ天」と名付けたというチェ−ン形式の天ぷら屋に入った。連休入り土曜のお昼時とあって家族連れもいたが、ボックス形式のテ−ブルのほとんどが男女の二人連れというのが気にくわない。しかし、すぐ目の前で揚げるタラの新芽やエビにキス、銀杏からフキのとうなど8種ほどにかき揚げや茶碗蒸しまでの天ぷらランチに抹茶アイス……これらは充分に葵と恵子の食欲を満たし、課長への怒りも忘れた二人はおおいに満足して店を出た。

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    中央通りはすでに歩行者天国になっていて、爽やかな風が吹き抜けていた。
    腹ごなしの散策でダンヒルやグッチ、ティファニ−、エルメスやディオ−ル、フェラガモなど各国から銀座に進出した有名ブランドの店を一通り冷やかして目の保養をしたところで、銀座千疋屋2階のパ−ラ−で食後のデザ−トということになった。

    階段まで続いた席待ち客の列に20分も並んで恵子は少々不機嫌だったが、案内されたのが道路側で眺望が良かったのですぐに機嫌が直り、葵がメロンパフェ、恵子がフル−ツミックスを注文し、雑談を始めた頃には恵子の顔にはいつもの笑顔が戻っていた。

    晴海通りに面した窓際は足元までの総ガラスだから、プラタナスの街路樹を通して数寄屋橋から銀座4丁目への風景が一望でき、街の景観や道行く人々のファッションやざわめきが新鮮に感じられ、目を楽しませてくれて飽きることがない。

    恵子が目ざとく何かを見つけて葵に告げて指を差した。

   「あの貴金属屋さん、見える? 向こう側の真正面の看板……」

   「街路樹の葉っぱが邪魔で……水中に4℃って字が泳いでる、あのお店?」

   「見覚えない?」

   「そういえば、どこかで見たかな?」

   「ほら、一緒にディズニ−でも六本木でも見たじゃない?」

   「そういえば、六本木シティと舞浜でも見たね。そうか、あのお店か?」

    店名が一風変わっているので恵子が店員に聞いたら、北極や南極の水面下で4゜Cのところに魚が集まるところから集客効果を狙って名付けたと言っていたのも思い出した。

    注文した品が運ばれると、葵はさっさとフォ−クをメロンパフェの上に乗ったイチゴに突き刺して口にしたのだが、恵子がまだ指輪にこだわっている。

   「これ見て。似合うでしょ?」

    左の中指に嵌めた指輪を自慢げに、指輪をしていない葵に見せびらかす。

    いつものことだから葵は気にもせず、今度は下から冷たい生クリ−ムを掬い出してメロンにまぶして口に運ぶと、ふくよかな果実の甘さが口の中にふわ−と広がり、幸せ感が身体中に染みてゆく。

    もう、こうなると指輪のことなどどうでもいい。それに、葵は見栄を張りたくないから自分で買った指輪などしたくもない。絶対に自分に惚れた男に買わせるのだ。

    恵子は、フル−ツミックスに手を出しながらもまだ続ける。

   「これ昔の彼に貰ったリングでね、この指に嵌めてると願いが叶うんだってさ」

   「別れたら外すもんじゃない? ドブ川に叩き捨てるとか」

   「とんでもない。これだって思い出がいっぱい詰まってるのよ」

   「でも、その指じゃ恋人募集中って公表してるんでしょ? 恥ずかしくない?」

   「変なこと言わないでよ。ボ−イフレンドになんか困ってないんだから」

   「じゃあ、恋人候補はいるの?」

   「いたら、こうやって葵と遊んでる暇なんかないわよ。葵は?」

   「私のことは放っといてよ。いずれ、よく選んでから最高の人と結ばれるんだから」

   「イヤに自信あるのね。じゃあ指輪はその人に?」

   「そうよ。おしゃれリングは年齢ごとに変わってもいいんだってよ」

   「それじゃあ、葵は彼が出来たら毎年買ってもらうつもりなの?」

   「徐々にグレ−ドアップして、いずれはダイヤにね」

   「私だってそれを満たすために、こうして直感力を強める左の中指にしてるのよ」

   「指なんか、左の薬指の結婚リング以外はどこだっていいじゃないの?」

   「そうはいかないわ。左の親指は困難に強く現実的、人差し指は能力アップ、中指はひらめきや直観力、薬指は愛の力だから結婚してなくてもいいのよ、小指はお守りで」

   「右は?」

   「親指は指導的立場を表し、人差し指はコミュニケ−ションを望むとき、中指は自分の思いどおりにしたいとき、薬指は創造性と愛の発展、小指は表現力を豊かにするの」

   「ふ−ん、これじゃ占いと同じじゃない。うちの母が手相を勉強していてそっくり同じことを言ってたわよ」

   「それはそうでしょ? ロ−マ時代から手相も指輪もあるんだから」

   「なんだか、私も指輪が欲しくなってきたな」
 
   「葵もそろそろ恋人募集したら? いくらでも集まるわよ」

   「そんなにいっぱい集めなくても、恋人は一人だけで充分よ」

   「葵の理想はどんな人?」

   「そうねえ、優しくて正直で頭がよくてタフで金持ちで男前で誠意があって……」

    そんな時に葵の携帯が鳴った。

    仕方なく出ると、お邪魔虫の沢口課長からの電話だった。


5、指輪(2)


添付ファイル: filekaiundou.jp_b04.jpg [詳細]

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