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アルプス秘話
6、カインド出版社(1)

7、カインド出版社(2)

「いまや、G7と呼ばれる先進7カ国先進蔵相会議は年中行事になっていて、この前の九州・沖縄サミットも大成功だった。世界の指導者の集まりであるG8・主要国首脳会議に次ぐ重要な国際的な規模で行われる経済閣僚会議だから、各国から注目されている」

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   「課長! その7カ国を言えますか?」

   「鈴山は口を出すな!」

   「でも、知りたいんです。課長はご存じないんですか?」

   「え−と、日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア……」

   「あと一つですね?」

   「派遣社員はだまってろ! ロシアだった」

   「ロシアは入ってません」

   「うるさい! いま、訂正しようとしたんだ。中国だろ?」

   「ぶ−、まさか? 葵さんは知ってます?」

   「財相と中央銀行総裁の会議なら、あとの一つはカナダでしょ?」

   「当たり。課長は、こんなのが出来ないんですか?」

   「うるさい。知ってたら聞くな!」

   「ここで働く以上は、上司の知的レベルを知りたかっただけです」

   「なんだと!」

    葵が笑いを我慢して仲裁にまわる。

   「まあまあ、課長も玲子さんも抑えて抑えて」

   「社内では玲子だの葵だのと名前で呼ぶな。苗字が有るんだぞ」

   「では、沢口さんも鈴山さんもムキにならないでください」

   「うるさい! オレのことは課長でいいんだ」

    玲子が冷静に話を戻した。

   「ところで、その先進7カ国蔵相会議がどうかしたんですか?」

    沢口が同じ内容をしぶしぶと再説明してから、話を続けた。

   「身代金の1千万ドルを、ユ−ロに換算するとだな」

   「ユ−ロだってドルだって大変な金額ですね。で、拉致事件は確かなんですか?」

   「分からん。4階の通信事業部からの情報だからな。言葉の違いから考えたら単なる憶測に過ぎないということもあるだろうな。ただ、小城代議士事務所に問い合わせたら、うろたえながら、パリでインフルエンザに罹って静養中とのことだ。それで秘書・警護官共々帰国が遅れるとか、これは明らかに時間稼ぎだ。怪しいと思わんか?」

    玲子が口をはさむ。

   「確かに変ですね。で、その3人はどこにいるんでしょう?」

   「それが分かれば、とっくに犯人は逮捕され、3人は開放されてるさ」

   「なるほど、課長はそれを取材費なしで調べさせようというのですね?
    葵さんはいいんですか? 命がけなのに、こんな危険なことをノ−ギャラで受けて?」

   「鈴山は黙ってろ! こうなれば、何が何でも記事ネタをスク−プして来い。自社の出版物だけじゃなく新聞、テレビ、週刊誌各社に売り込んで売り上げを延ばすんだ」

   「課長! 葵さんに取材費ぐらいは払ってくださいよ。私も手伝いますから」
 
   「取材費なんかあるわけないだろ。山田がヨ−ロッパに行くというから頼むんだ」

    玲子にあおられて葵も参戦した。

   「私はいいけど、一緒に行く友人はガメツイですから協力費がないと……」

   「分かった。記事になったら、それなりの報償金を出そう」

    部外者の鈴山玲子が目を輝かす。

   「ホントですか! いくらですか?」

   「だから、それなりだ」

   「聞いた? 葵さんに取材費、私達にもそれなりのお小遣いが出るようですよ」

   「有り難う。玲子さんのおかげです」

   「葵さん、頑張ってね。中川さんにも電話しておきますね」

   「おいおい。そこまでは言ってないだろ!」

   「いいえ。報償金を出す、とお聞きしました」

    そこで打ち合わせは終わった。

    憮然とした表情の沢口をそのままに、葵と玲子は納得した顔で立ち上がった。

    玲子は茶碗とトレイを持ってキッチンル−ムに、葵は自分の席に戻った。葵の事務机の上には書類の山に埋もれながらもパソコンだけがでかい顔で居すわっている。

    葵はまず、仕事や私生活の情報交換で交信中のメルトモや、葵が社命で始めたメルマガを通じて交流中の葵ファンにも『GW中は不在』、とだけ伝えておくことにした。

    この職場では私用も公用もない。仕事に生かせるなら何でも許される。それだけが、この会社の取り柄だった。だからこそ、葵はこの会社が好きなのだ。



8、出張(1)


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