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アルプス秘話

6、パリの事件(2)

7、オペラ座(1)

「いよいよ、待望のオペラだね」 

だが、今から急いでも開演には間に合わない。幕開けから観られないのは残念だが、それでも、キャンセル客がプレゼントしてくれた貴重なチケットだから無駄になどにはしたくない。

二人はようやく捕まえたタクシ−に乗りこみ、「オペラ・ガルニエ」と行く先を告げたが、すでに開幕時間には間に合わない。車内で恵子がクレ−ムをつける。

「もう、骨董屋とかアンティック趣味なんて止めなよ」

「どうして?」

「おかげでイヤな事件に出あったでしょ?」

「そんなの私の趣味と関係ないわよ」

「大ありよ。葵は恋愛でも何でも保守的なんだから」

「余計なお世話よ。恵子こそ、くされ縁はまだ続いてるの?」

「やめて、きっぱり切ったんだから。これでも悩んでるのよ」

つい数週間前のことだが、玉の輿(こし)とはやされて交際していた恵子は、その恋人が複数の女性と交際していたのを知って、いいわけ無用で別れたばかりだったのだ。

「今度は甘い話には乗らないし、絶対にいい男をキャッチするからね」

恵子の絶対は、耳にタコが出来るほど聞き飽きている。

「そうだ、恵子。この旅を幸せを求める旅にしよう!」

「幸せを求める旅か……それなら大賛成よ」

国立美術学校の横からカル−ゼル橋を渡ってセ−ヌの流れを眺めてアンドレ・マルロ−広場に出れば後は、日本の有名デパ−トや銀行も名を連ねているオペラ大通りを一直線に走ってオペラ・ガルニエに着いた。

演し物も筋書きも分かっているからといっても、幕開け前の観客の興奮から観てこその観劇なのだ。なのに開演には間に合わなかった。

次の幕間まで待たされて大歓声と拍手の後で3階右サイドの指定席にたどりつくと、1階の正面桟敷から6階の立ち見席までの場内はすでに華やかな観客で超満員の盛況で、すでに場内の雰囲気は最高に盛り上がっていた。赤と金の色彩を意外なほどシックに感じさせる場内と2千2百の客席、大理石の壮大な列柱……二人共、ここで観劇するのは初めてだから感激も大きい。二人の席は舞台からは横になる位置だったが3階から見下ろす舞台の光景は悪くはない。これで、バレエの2倍もするというオペラの料金がもっと安ければ申し分ないのだが……

これは、タダ券で観劇する葵の言うべきことでもない。

パリで人気急上昇中という新進の俳優たちによって上演された芝居は圧巻だった。

カン違いからの薬物で絶命したオフェリアを抱きしめたハムレットが、悲しみの心を歌い上げると客席からすすり泣きが波立ち、幕が降りてからもカ−テンコ−ルの喝采が鳴りやまず、それから何度か幕が開いたり閉じたりして主演の男女と主だった俳優が舞台に立ち拍手の嵐を浴び、客も立ち上がってさらに盛大な拍手を送った。こうしてオペラ座の夜は終わった。

8、オペラ座(2)


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