Welcome Guest 
メインメニュー
サイト内検索
ログイン
ユーザー名:

パスワード:


パスワード紛失

新規登録
[ リロード ]   [ トップ | 一覧 | 単語検索 | 最新 | ヘルプ ]

Counter: 4483, today: 1, yesterday: 4

アルプス秘話
6、出動(2)

7、アレルギーサロン(1)

美代が席に着くと、クロ−ド警視が続けた。

「オギ財相に不測の事態が起これば、確かに世論はフランス警察の不手際を責めるだろうが、ここではっきりさせておきたい。このオギ財相らの拉致事件が発生したのは、警察にも届け出義務のないプライベ−トな外出中の出来事だったということだ。したがって、パリ警視庁は公的な責任は負わないものと承知している。それだけは、日本の警察を代表して参加したハマ・ミヨも承知していてもらいたい。だからといって、捜査の手抜きは絶対にしない。

ここは徹底的に麻薬組織を叩き、オギ財相は必ず救出する決意だ。諸君もそのつもりで頑張ってくれ」

続いてダニエル警部が立ち上がって発言した。

「鑑識からの検視報告を見ますと、サコマル秘書の直接の死因は38口径の拳銃による心臓貫通死となっていますが解剖の結果、胃から致死量に至る薬物も発見されています。それは、サコマル秘書が手にしたタバコから検出された微量ながら猛毒のシアン化ナトリュ−ムであることも判明しています。

サコマル秘書は元麻薬捜査官としての職業的な義務感に徹して、EUの麻薬密売組織の全貌を知ろうとしたのは間違いないと思います。その意図をパゾリ−ニに見破られて追尾していた刺客に知らされ、殺害されました。しかし、サコマル秘書の奪われたカバンの中身が何であったか? これが、この事件の謎を解くカギであるとも考えられます。したがって、サコマル秘書殺害の犯人の逮捕と同時に、奪われたサコマル秘書のカバンの発見についても、諸君は全力で追求し探索してください」

そこで、ダニエル警部がクロ−ド警視に向かって口調を変えた。

「日本からは昨夜、民間のウナバラという民間の警護員がインタラ−ケンまで来ているとのことですが、多分、ミュ−レンで合流します。救出作戦には参加させますか?」

「警護でも後方支援でも何でもいい、味方は一人でも多いほうがいいからな」

「分かりました。万が一にも、日本の財相が殺害されるというような最悪のシナリオが現実になったとしたら、その警護員に責任をとってもらいます」

「それは少し酷な話じゃないのかね?」

「先刻のハマ・ミヨ刑事の説の通り、ここでフランスの国際的な信用が失墜したら、パリがEU圏でもっとも治安の悪い都市というレッテルが貼られます。

日本との友好関係を損ねると観光収入もガタ落ちになり、国益をも損ないます。

場合によっては現政権崩壊というシナリオもあり得ます……そう考えて策を練ります。この民間警護員のことは、同じ国民であるハマ・ミヨ刑事に預けます」

美代があわてて挙手をして立ち上がって発言した。

「わたしは、自分のことでせい一杯ですが?」

「大丈夫、わたしが付いてますから……」

隣にいたシャ−ロット刑事が美代に言って微笑んだ。 

クロ−ド警視が憮然とした表情でダニエル警部を見た。

「そのような姑息な策略はワシは好かん。万が一にもそのウナバラに責任を押しつけることなどないように願いたい。だが、どうしてもとなれば、ダニエル警部の好きなようにしてくれ。ワシは知らんことにしておく……」

ここでクロ−ド警視は、真剣な表情で決然と声を張り上げた。

「さて、これで最終議題に移る。いまは、彼らの一部が拉致したオギ財相を連れてインタラ−ケンまで移動したことは、地元からの情報と電話の逆探知で判明している。彼らは身代金の全額が入れば、直ちにオギ財相ら二人を釈放すると宣言している。しかし、日本政府は半額の5百万ドルを振り込んだだけで我々に責任を押しつけ、解決を迫っている。このままではオギ財相ら二人を見殺しにするだけだ。スイスの山岳部に限定して彼ら麻薬組織のボス達の集合地が特定できれば、身代金に関係なく一味の逮捕が可能になる。手掛かりがあったら相手は誰でも何でもいい、どんな些細なことでも発言してくれ」

麻薬捜査課のマルセルというベテラン刑事が、ためらいがちに手を上げた。

「例のサコマル事件の後、パリ郊外のパゾリ−ニのマンションに事情聴取に行った時のことです。一切証言は拒否というかたくなな姿勢の細君に、パゾリ−ニがパリで金髪の若い娘と仲睦まじげに連れ立っていた、と告げたら急に不機嫌になって、『夫は前日、家を出る前に誰かと電話での話し中に、“明後日の3時にアレルギ−サロンか、不便だな”と言ってました』と、聞いたのを思い出しました。関係はないかも知れませんが……」

「なんだ、それは? 不便なところってどこだ? だれか“アレルギ−サロン”って聞いたことあるか?」

シャ−ロット刑事が立ち上がった。

「すぐ、スイスの警察、電話局、民間の職業調査会社で調べてみますか?」

クロ−ド警視が指示した。

「全員で手分けして15分で調べろ! 携帯でもネットでも電話帳でも何でも使え。不便なところで、アレルギ−サロンだぞ」

15分という短い時間が過ぎると、それぞれが席に戻り、否定的な発言が続いた。

シャ−ロット刑事が全員の調査結果を手早くまとめてダニエル警部に手渡した。

「スイス国内全域では、アレルギ−を治療する病院は数多くありますが、山岳地帯を含めて、病院、クリニック、施設など、アレルギ−サロンの名称の事業体は存在しません」

ふと、定年退職寸前の婦人警部補のマ−シャ刑事が遠慮がちに口を開いた。

8、アレルギーサロン(2)


XOOPS Cube PROJECT