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アルプス秘話
6、もしも、の恐怖(2)

7、パリへの帰還(1)   


 本来であれば、事件で死亡した遺体は司法解剖するのが通例である。
 しかし、「秘書のお骨を一刻も早く遺族に引き渡したい」、という財相と電話で話し合った遺族との要望を酌んだクロ−ド警視の気配りで、草苅秘書の遺体は解剖されずに荼毘に付されることになり、葵をはじめとする日本人全員と一緒に草苅秘書の遺体もひとまずシテ島にあるパリ警視庁に直行することになった。
 状況から見て、クロ−ド警視もダニエル警部もまだパリには帰れそうもないことから、シャ−ロット刑事が通訳を兼ねて、日本組と同行することになる。
 ただ、アエロスパシアル350B型武装ヘリは二機とも、ジュネ−ブへの搬送用に使われていて、すぐには使えない。
 それを知ったスイス警察のロイド警視の好意で、ユ−ロコプタ−AS350改良型ヘリが提供された。テラス横の発着場は、2機のフランス機が飛び立つと、スイス機が降下するというように交代で使われていて、丁度、入れ代わったばかりだったのだ。
 操縦は、1階のレストラン・イ−グルネストで休息中のライアン刑事に任された。
 まず、布で包まれた草刈秘書の遺体を乗せている間に、葵と恵子と美代の3人が、1階の洗面所で鏡を見ながら身支度を整えていた。三人ともすっかり汚れきって見られた顔じゃない。それでも洗顔して簡単にうす化粧をしただけで見違えるように綺麗な肌が甦ってくる。これが若さなのかも知れない。
「葵はあの髭男、見かけた?」
「ヘリのところかな? 美代は見なかった?」
「そういえば、さっき、一階のイ−グルネストの店長と話してたけど」
「何の話? 言葉も通じないのに」
「でも、通じてたみたいよ。ロ−プとか言ってたから」
「ロ−プ? まさか首でも吊るんじゃないでしょうね? 葵に失恋して」
「恵子、いい加減にしてよ。縁起でもない! それに、まだ失恋なんか……」
「あら、葵ったらムキになって。惚れた?」
「誰があんな男に……私だって好みがあるんだから」
「葵ったら顔をあからめて、どうしたのよ?」
「顔なんか赤くないでしょ?」
「で、どんな好み?」
「ま、余計なことを喋らない男とか」
「あ、そうか! なんか言ったら、『同じく』って言ってくれる人ね?」
「冗談じゃないわ。そんなヤツ。顔も見たことないし」
「髭のボ−イフレンドも出来たし、その他大勢の中のそいつなんて、『絶交』ってメ−ルしたら、すぐ『同じく』って返ってくるわよ」
「分かった、それで、そいつとは終わりね」
「ほんと? だったらすぐメ−ルしたら」
「そうする。あら、時間だ。早く行こう」
 ヘリポ−トに急ぐと、シャ−ロット刑事が時計を眺めながらイライラしている。
「海原さんは?」
「Mr・ウナバラはもう機内にいますよ。これで全員です」
「では、もう出発ですか?」 
「いえ、ちょっと用があるので……」
 と、妙にシャ−ロット刑事の歯切れが悪い。
 機内に入ると、すでに小城財相と二郎は座席に座って目を閉じていた。
 葵は、二郎の編み上げ靴に雪が付着しているのに気付いた。
(二郎はレストランの店長からロ−プを借りて,雪の中に降りたのか? でも、下の雪原に出るだけなら階段があるはずだからロ−プは不要なはずだ。そうなると、テラスのフェンスからロ−プを垂らして雪の中に出た理由は?)
 葵の仮説が先に進む前に、現実の方が一歩先に進んだ。
 建物から出たダニエル警部が、急ぎ足でヘリに近づいて来るのが目に入ったのだ。
 それを見たシャ−ロット刑事が機内から降りた。
 ダニエル警部とシャ−ロット刑事が、早口のフランス語で二言三言交わしてから、機内の二郎を呼んで手招きした。
 二郎が機内から出て二人の間に入ると、シャ−ロット刑事が何事かを告げている。
すでにヘリのロ−タ−が回転していて会話の声は機内の葵にまでは届かない。ただ、シャ−ロット刑事の口唇の動きが日本語で、「あの銃の……」と口をつぼめて言ったのは読めていた。そこからの内容は分からい。


8、パリへの帰還(2)   


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