Welcome Guest 
メインメニュー
サイト内検索
ログイン
ユーザー名:

パスワード:


パスワード紛失

新規登録
[ リロード ]   [ トップ | 一覧 | 単語検索 | 最新 | ヘルプ ]

Counter: 1820, today: 2, yesterday: 2

雪降る夜の迷い人

大当り

           村山 恵美子

 商店街の福引すら当たったためしのない私が、思いもよらない大当たりを引いた。1万人に一人いるかいないかという難病との遭遇である。「なぜ私なのだろう」と、考えてみてもどうにもならないことを、毎日考えた。
 しかし、いくら考えてみたところで仕方がない。ならばせめて、病気を理解し上手に付き合っていかなくちゃと思い、退院後、インターネットから知識を得ようと山ほどヒットするサイトを片っ端から読んだ。
 ところが、知識が深まり病気に立ち向かう勇気が湧くどころか、どんどん嫌になってくるではないか。原因はよくわかっていない、根治法も不確立、人によっては急激な視力低下もある、歩行困難に陥るケースもある、再発を繰り返すのが特徴…などなど、げんなりする言葉のオンパレードである。希望を持たせてくれる甘い言葉など、何を読んでも一個も見つけられない。
そうか、そうだよね、だから難病なわけだ…。
「あーもう嫌だ」
 腐るから読むのをやめた。

 ふと、馬鹿馬鹿しいことをやっていることに気がついた。病気について沢山の情報を得たからといってなにになるのか。日々一生懸命暮らすことしか私に出来ることはないわけだ。調子が悪くなったなら、
「先生。アタシまたダメみたい。治してー」
 と病院に駆け込み治療を受ける。それしかない。有効とされている治療法はゼロではなく少ないなりにあるのだから。
そうこうしているうちに、世界のどこかの研究者が新薬を開発してくれるかもしれない。その昔不治の病と言われたコレラや結核だって、今はちゃんと治るではないか。医学は日進月歩、プロの頭脳に期待して暮らそう。決めた。

 幸い私は日々の暮らしを綴ったエッセイを書くという楽しみを持っている。
田舎に暮らし、これといった事件も刺激もなくそろそろネタ切れしそうな私に、神様が絶好の作文ネタを与えてくれたのかもしれない、なんて考えてみる。こんな大当り、そうそう引けるものじゃない。よーし、しめしめ…と。
でも、なんだかんだ言っても本音は怖い。再発が怖い。再発を繰り返すことで治りづらくなっていくことがとても怖い。けれど、怖がるだけで今日が終わるのはご免こうむる。
 「一発で病気を発見してもらえて、本当にラッキーでしたね」と保健所の職員に言われた。ラッキー?なにが? むっとしたが確かにそうかもしれない。
 この大当りはラッキーなのだ。大丈夫まだまだイケルさ。と空を見た。


XOOPS Cube PROJECT